ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 馬車道には煌々と灯りが灯されている。その灯火の中、ラインハルトの渋い美貌が真っ赤に染まっているのを認めた。

「はい、陛下」

 異存があるわけがない。

「息子夫婦らの扱いも注意してほしい」
「わかっています、陛下。傲慢でイヤーな義母に見えるよう、精一杯がんばってみます」

 とはいえ、演じられるかどうか微妙だわ。

 多くの使用人たちを前にしたら、きっと緊張してしまう。

 これまで、少数の人たちの前ですら立ったことなどないのだから。
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