ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 あっと思う間もない。

 侍女がつんのめった。しかも、盛大に。彼女の手から、お茶のポットとカップがはなれた。ポットの蓋が外れ、カップのソーサーも外れ、弧を描くようにして宙を舞う。

 ゆっくりゆっくり舞うその光景は、まるで本の文字を追っているみたい。

 このままでは、ポットの中身とカップの中身がぶちまけられる。それは、確実にわたしにかかってしまう。

 やるわね、ディアナ。それを見越して、足で侍女の足をひっかけるなんて。

 だけど、相手が悪かったわね。
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