ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
「陛下? ああ、そうだった。きみは、陛下に嫁ぐのだったな」

 彼は一瞬、わたしから城壁の方へ視線を移した。

「まずは葡萄酒を飲もう。この地方は、葡萄酒の名産地でね。とくに赤は最高だ。今夜の料理によく合う。それに、きみはまだ緊張している。というよりか、不安や警戒をしている。チカ、おれが怖いかい?」
「いえ、怖くなど……。男性と二人っきりですごすことがないものですから。それどころかだれかにこんなに親切にしてもらったり、話をしたりすることじたいほとんどありませんでした。あの、クラウス様?」
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