ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 ラインハルトは、この部屋に入ってくるまでに使用人たちに事情をきいたに違いない。

 渋い美貌がめちゃくちゃ怖くなっている。

「まあっ、お義兄(にい)様」

 彼女は、途端に黄色い声を響かせつつ腰をくねらせラインハルトに抱きついた。

 一瞬、彼女がこちらに意地悪な視線を走らせたのを見逃さない。

「やめろっ」

 鋭い制止とともに、彼は彼女を突き飛ばした。とはいえ、彼女がうしろへよろめく程度にではあるけれど。
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