ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 わたしに気を遣ってくれているのである。

 そのようなことは必要ないのに、といつも思っている。汗臭くてもジジイ臭くても、ちっともかまわないのに。

 そう伝えても、彼ははにかんだ笑みを浮かべるだけである。

 でも、彼のそんなささやかな気遣いがうれしすぎる。

 そこまで考えたとき、ハッと現実に引き戻された。ラインハルトの声が、耳に入ってきたからである。
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