ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 テラス側のガラス扉のカーテンが少しだけ開いていて、そこに夜着姿のラインハルトがたたずんでいる。強烈な月光が彼に降り注いでいて、刈り揃えたばかりの金髪を輝かせている。

 彼の横顔が大人のもので、見た瞬間に心臓が飛び跳ねてしまった。

 将校服姿ではなく、ただの夜着である。それなのに、彼が猛々しく輝いて見える。いいえ。それだけではない。激しくもあり、慈愛に満ちている。
< 589 / 759 >

この作品をシェア

pagetop