ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 彼こそが皇帝にふさわしい。

 心からそう感じる。この堂々とした姿を見れば、だれだって感動するにきまっている。

 同時に、いままでにない不安感に襲われた。

 こんな立派な人が、どうしてわたしを妻に? わたしを愛してくれるの?

 どう考えてもおかしすぎる。

 すっかり有頂天になっていた。ちやほやされて、自分の容姿や素性を都合よく忘れていた。

 手許をみおろすと、上掛けをつかむ両手が小さく震えている。

 不安と恐怖で震えている。
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