ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
「いえ、ち、違います。陛下、違うのです」

 鍛錬用のシャツの袖で涙を拭きつつ、出てくる言葉は同じものだけ。しかも、意味をまったくなさない。

「どこか痛むのか? もしかして、鍛錬のときにどこか痛めたとか? まさか、マッサージでとか?」

 彼は自分で言いながら、ますます慌てふためいている。

 月光の中で慌てふためきしどろもどろになっている彼を見ながら、不意に何かが頭の中に閃いた。それこそ、脳内ですさまじく発光した感じである。
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