ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
「チカ? 大丈夫なのか?」
「は、はい、陛下」

 現実に引き戻され、慌てて答えた。

「その、近づいていいかな? 涙の理由は、これ以上は尋ねないから。きみが嫌でなければ、すぐ側についていたい」
「陛下、その……、不安なのです。怖いのです」

 寝台の上から訴えていた。

 このまま黙っていてもよかった。そうしようと思いもした。
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