ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 帝都にやってきたときに見た光景や、遠乗りの際に見るこの国の平和で穏やかな日常は、もっと違っていたかもしれない。

 そして、わたしたちの出会いもなかったかもしれない。

「チカ、じつは同じ時期にもう一か所傷を負ったんだ」

 彼が下着の裾をめくると、左腹部にやはり剣で斬られたような古傷があらわれた。

 斬られたというよりかは、かすめた感じかしら。

 んんんんんんん?

 またまた見たことがあるような気がする。

 これまでのようなモヤモヤした感じではなく、チカチカと何かの光景が頭の中で瞬いている。
< 622 / 759 >

この作品をシェア

pagetop