ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 そのとき、気配を感じた。

 ビビビッときたのである。これは、小説などに出てくるような「運命的な何か」のビビビッではない。

 動物的感覚? 女の勘? 第六感?

 とにかく、嫌な感じのビビビッである。

 身構えたときには、廊下に複数名の影が浮かび上がっていた。

 ディアナがふっ飛ばした酢漬けキャベツの前でしゃがみ込んだまま、何度か瞬きして集中してみた。

 いずれもこの夜の為にロイター公爵家が雇った給仕人たちである。正装で、髪もきっちり整えている。小説のように黒色の覆面をかぶっているわけではなく、素顔をさらしている。
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