ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
「チカッ」

 ふらついてしまったところを、ラインハルトが左手の男を放り投げて受け止めてくれた。

「陛下、だ、大丈夫です」

 ショックはショックだけれど、体調によるふらつきではない。意識は信じられないほどしっかりしている。だから、すぐに体勢を整え直して笑顔を作ってみた。

 だけど、それはひきつっていた。

「陛下っ、うしろ」

 そのとき、左頬に傷のある男ともう一人が短刀を振りかざして襲いかかってきたのが、彼の立派な体越しに見えた。
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