ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 クラウスは朝食をとっているときも出発後も、わたしの顔についてなにも触れてこなかった。

 もしかしたら、わたしだけが気まづい思いをしているのかもしれない。彼は、気がついていないのかも。 
 でも、それはないわね。どう考えたって、この顔は泣きはらしまくったひどい顔なのだから。
 とにかく、彼は気がついている。だけど、なんとも思っていない。

 そうね。きっと、それよ。気がついているのに、なんとも思っていないのよ。もしかすると、やさしい彼のことだから、気がつかないふりをしているのかもしれない。

 いいえ。やはり、わたしのことなんてなんとも思っていないのよ。興味がないのよ。

 頭の中で、ずっと自問自答を繰り返している。馬に乗ってからもずっと。

< 92 / 759 >

この作品をシェア

pagetop