君は、6人目のメンバー。

  君の瞳に 映りたい
  たった1秒でも それ以下でも
  そんなの無理ってわかってる
  だって
  君は太陽みたいで
  私はただの雑草
  それでも 少しでも目をとめてほしくて
  小さな青い花を咲かせる
  
  

そこまで書いて、ふーっと息をつく。

小学校の頃から使っている学習机の上。
お気に入りのノートに、夜空みたいな紺色のペンで書いた文字。
自分が書いたばかりのその文字を、そっと撫でる。


笑っちゃうけど、これが、今の私の1番の趣味。

恋人どころか、好きな人すらいないけど、
妄想で、恋愛系のポエムを書くこと。

こんなことするの、小学校の頃に、友達と遊びで交換日記に書いてた以来。

でも、夜寝る前とか、こうやって書き出すと、なんだか気持ちが落ち着くんだ。

今、現実の私の毎日は、「ときめき」とか「ドキドキ」とか「キラキラ」とかとは無縁の、地味でつまらない高校生活を送っているだけで、心が動かされるようなことはほとんど無いけれど。

妄想の私は、キラキラした素敵な人に恋をして、幸せだったり切なくなったり、感情がジェットコースターみたいに揺さぶられて……。

そんな気持ちを想像して、言葉にする。

それが、なんだかすごく楽しくて。

「あ、やばっ」

私は、慌てて部屋のテレビをつける。
隣の部屋で弟が寝てるから、できるだけ小さな音で。


パッとテレビ画面がつくなり、
あの人…… 早瀬カイトが映った。


(あ、この曲、好き)


早瀬カイトのいるアイドルグループの、2枚目のシングル曲だ。確か。


(綺麗な顔……)


切れ長の大きな瞳。
しなやかな身体。

激しいダンスを踊りながらも、
どこか余裕があるように見えるのは、魅せ方が上手いのか、努力の賜物なのか。

やっぱり彼は誰よりも輝いていて。

画面のどこを見てもかっこいい男の子が映っているのに、私の目は彼だけを追いかける。


脳みそが、痺れる。
心が、動く。
胸の奥、私の身体のど真ん中が、疼く。


テレビ越しに見ているだけなのに、
こんなにドキドキするなんて初めて。


もし、こんな人と恋愛なんてしたら…どうなっちゃうんだろう?


そんなこと、ありえないけど。


でも、もしも…。



画面の中で、早瀬カイトの口角がふっと上がる。


(わっ)


きゅん、と、私の心臓も跳ね上がった。







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