落ちて来たのは、イケメンでした。
「あーもう! 俺はもうあんたたちとは関係ねぇの!」

 うんざりとした様子で肩の手を振り払ったトオルは、旦那さんに向き直ってハッキリと告げた。
 だがやはり旦那さんは引いてくれず。

「関係ねぇわけあるか! 今も誘われてただろうが!」

 尚も怒鳴る旦那さん。
 奥さんはサチの姿を見てバツが悪そうな表情をしていた。

「はぁ……ったく、仕方ねぇな。じゃあ証拠を見せてやるよ」
「証拠?」

 聞いたのはサチだった。
 この怒りに満ちた旦那さんを納得させるような証拠などどこにあるのだろうか?

「まあ、元をたどればあんた達が原因でもあるんだ。ちゃんと見届けてくれよ?」

 サチの問いに心配するなとでもいうように頭を軽く撫でたトオルは、旦那さんにそう告げるとサチから少し離れ向き直った。

(何なの?)

 疑問を顔にも浮かべるサチの前で、トオルは片膝をつくようにひざまずく。
 そして小さな箱を取り出した。

「っ⁉︎」
(これって……!)

「サチ……俺たちの出会いはとんでもなかったけど、俺はあのときあんたの所に落ちてきて良かったと思ってる。そういう運命だったんじゃないかって思うほど、サチと過ごす時間はとても居心地がいいんだ」

「トオル……」

「サチの側にずっといたい。サチの側にいる男は俺だけでありたい」

 そして、小箱が開けられる。

「大好きだよ、サチ。俺と結婚して下さい」

「っ⁉︎」

 サチだけでなく、この場にいる夫婦も息を呑む。
 数拍の静寂ののち、夫婦が固唾を呑んでサチの返事に注目しているのが分かった。
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