私ってそういうこと⁉ー覚醒編ー/三部作最終話❣
その3
夏美



私が南玉に加入してからしばらくは、二派勢力の比率は守旧・急進の5対2、そこに中間派が3というラインが概ね保たれていたと思う

ところが、ここ直近の南玉連合内では、概ね守旧3、急進3、中間4という急進派の猛烈な増進はあったが、中間派が最も多数という状況よ

さらに、私たち2年の代だけなら、4対4対2という比率になるわ

ただし、勢いからすると急進派が明らかにリードしてるのは否めない

...


これは急進一派が、分かり易い荒子のイケイケ路線を全面的に掲げることで支持層を広げていったことがあるが、なにより、古い固定観念を捨て、新しい流れに則した現実的な行動指針に転換しようといった、革新的スローガンを伴っていたのが大きかったと思うよ

さすがに”新しい”とか”現実的な”と言ったフレーズは、アピール度が高いしね

でもね…、私にはどうしてもおいしい宣伝文句にも見えてしまうよ

少なくとも、守旧派を古い、旧態依然と一言で切って捨てていいのかと…

そこは、やhり慎重に見極めなければならないことだと思うし、安易なスルーは危険だって

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幸い新しい執行部は守旧派なんで、なんだかんだ言っても組織運営の主導権はこっちの手にある

私たちは、あまりにも急激な路線転換は禁物だという基本姿勢だけは一貫し、なにしろ新しい方向に進むにしても、慎重かつ緩やかな移行が必要だと常に発信を心がけていたわ

その為には組織内のバランスが何よりも肝要になる

真澄たちは勢いに任せてバンバンくるから、返って、その突きどころも拾えるのよ

そうした時、冷静に賢い選択を誤らない空気は絶対に欠かせない

一方にどっと流れてしまうような”極”は、断じて排除して行かないと…

そこでこの秋、荒子と同じ1年の矢吹鷹美を補佐控えに抜擢した訳でね


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去年の亜咲もそうだったように、この時期の補佐控えのポスト移行は、次の代のリーダー候補にという意味合いがあった

ただこ今年に限っては、客観的に見て、合田荒子がその突出した特異な存在感もあり、達美や私から見ても次代総長は彼女というラインで動かないだろうと踏まえている

もっともこの鷹美は、荒子と今年高校に進学した矢先、街中で一目交わしたその瞬間、取っ組み合いのケンカをやってのけたという空手有段者の豪女よ

その信条・理念は元より、荒子とは違ったカリスマ性を持ってるから、本来なら来年の総長はこの子でもおかしくない

でもねえ…、さすがにあの狂犬娘と比較されちゃうと如何せん地味なのよね

第一、本人は好んで人の上に立って何かをというタイプではない

それは性格的なものだろうけど…


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それでも、この鷹美を私たちの執行部に加えることによって、今の1年連中に対する荒子との比較像はガラッと変わる

そこを私は重視してるわ

つまり、急進派がこぞって押し上げてるイケイケの荒子の色に染まらずに済むのよ、このポストでの鷹美であるならば…

そのことは、特に今の1年の二人をそれぞれの視点で見ることが叶い、最低限のバランス感覚を失わなくて済むことを意味してるのよ

それを私は期待している…

...


無論、この子は達美と私が自分に何を求めているかを十二分に承知してるわ

だからこそ、こうまで慎重で控えめな姿勢を通してるのよ

うん、今はこれでいいと思う

南玉のメンバーも、荒子とも匹敵する空手女が、こうしていじらしいくらいまでに謙虚な実質南玉ナンバー3として狂犬娘と対象的であればあるほど、鷹美への”一目”は確たるものを得続けるはずだから…


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「…じゃあ、せめて私はさ、土佐原OBを通じて紅丸さんの考えを確認してみるつもりだけど、達美も鷹美も、それはいい?」

「ああ、私からもそれは頼むわ。いずれにしても紅子さんの言い回しとなりゃあ、私あたりじゃ解読不能だから、はは…。こういうことは夏美でないとな」

「私も同感です…」

「なら、それを受け取った時点でまたね。何しろ真澄のことだから、一旦、議案上呈すれば押しまくってくるから。こっちもそれなりの対処に備えないとね」

ここで、その日の3人による執行部ミーティングは散会となったわ





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