キミイロの世界を、もう一度。
episode 1
「詩織ちゃん、これどうする?」
「あぁ、これはあっちに」
「詩織ー!これできない!」
「私がやっておくよ」
文化祭の準備中___……。
教室内はとっくに文化祭ムードのテンションだ。
そんな中でもテキパキと準備を進めなきゃいけないもの。
特に、学級委員長の私は。
さっきから「あれがわからない」だの、「これおしえて」だの。
引っ張りだこの状態だ。
しょうがないか、1週間後に迫っている文化祭が終わるまでの辛抱だもの。
誰にも聞こえないようにため息をつくと、私は黙々と作業を続けた。
________________________________
《完全下校時刻になりました。校内に残っているみなさんは、速やかに下校をしてください》
毎日19時に流れる、校内放送でハッと我にかえった。
本当だ、もうこんな時間……。
外を見ると案の定、真っ暗。
準備物に夢中になるあまり、時間の進み具合なんて全然気にしてなかった……。
なんとか仕上げたクラス看板を踏まないように、空いたスペースに寝転ぶ。
「誰もいない教室……か。……なんだか新鮮ね」
「___俺もいるけどね」
1人でボソッと呟いたつもりだった。
誰もいないと思い込んでポロリとこぼした言葉だったのに。
___まさか人がいたなんて。
慌てて起き上がって、声の主の方向を向く。
「……あぁ、降谷くんか」
「なにその残念そうな声。どーも、降谷くんです」
リュックを机に置いたまま自分の席に座っていた彼___降谷玲弥。
クラスの中では中心的な人物で、男女問わず人気者……。
< 1 / 33 >