キミイロの世界を、もう一度。
「降谷くん……!」
真っ白な扉を勢いよく開ける。
それとともに、消毒液のにおいが鼻をつんと刺すように刺激した。
そして、ベッドに力なく横たわっていたのは___……。
「っ、降谷くん……」
寝てる、のかな……。
できるだけ起こさないように、静かに行くけれど。
点滴に繋がれた彼の姿から目を背けたくなる。
清輝橋病院、306号室。
降谷くんのお母さんからもらった紙には、そう書かれていた。
やっぱり、ここにいたんだね……。
どうして病院なの?そんなことを考えてる暇なんてなくて。
ただただ今は、また降谷くんに会えたことが嬉しかった。
病院服を着て、ベッドで寝ている降谷くんは、前よりも少し痩せていた。
腕には、何度も点滴をしたのであろう痕が残っている。
「っ……こんな辛い思い、してたんだね……」
見るだけでわかるもの。
目の下にある隈。
降谷くんだって、ちゃんと寝れてないんじゃない。
文化祭前日、彼が私にしてくれたように、私も降谷くんの頭を撫でてみる。
「……なんで……っ、私に言ってくれなかったの……?頼ってくれなかったの……っ?」
涙が溢れてきて、一気に心が重くなるのを感じた。
「人のことばっかり……」
そのまま降谷くんの温かい手を握ると、優しく握り返してくれた。
「……詩織……?」
「っ!……降谷くん……」
ダメだ、今1番辛いはずの降谷くんの前で泣いてたら。
急いで拭おうとするけれど、もう降谷くんの瞳はしっかりと私を捉えていた。
「っ、はは……また泣いてる……」
弱い力で、私の目元に手を持ってくる彼。
優しく拭うと、降谷くんは、数ヶ月前と何も変わらない優しい笑顔を作った。