無口な担当医は、彼女だけを離さない。


「はぁ…ごめんいきなり」

「…ううん。あ、もう大丈夫だよ」

「は?」

「私のとこばっかりいられないでしょ。だから行って」

「いや大丈夫だから。それに俺今日…」

「お願い。…もう今日は来なくて大丈夫、だから」



多分今世那くんとこのままいたら思ってもないことまで言ってしまう気がする。


何も悪くない優愛さんのことも悪く言ってしまう。



「分かった。入院はしなくて大丈夫だから、もう少ししたら迎えにくる」



世那くんが病室を出ていって1人になった時、抑えていた涙が溢れてきた。


なんでこんなに自信がないんだろう。


世那くんがあれだけ言ってくれてもどこか信じられない。


自分に自信がないから彼氏の世那くんのことでさえ信じることができないのかな。


どんどん自分が嫌になる。結局私は何も変わっていないのかもしれない。

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