無口な担当医は、彼女だけを離さない。
じんわりと涙が滲むのが分かる。
私ほんとに自分勝手だ。
この間までは世那くんのこともっと知りたいって思ってたのに。
ほんとに…子供だ。
「泣くなよ…手放せなくなるって」
「ごめっ…ごめんな、さい」
「でも俺もちょっと思ってた。昨日栞麗が倒れた時山本…っていう男の子が来てくれたんだけど」
「あっ…」
「なんか栞麗のことちょっと知ってるっぽかったし?まぁ俺もこのくらいで嫉妬するくらい幼稚なわけ」
世那くんでもそんなこと思ったりするんだ…勝手に私だけかと思ってた。
少し安心したし世那くん的にはもっと嫉妬ポイントがあるらしい。
「…って感じで28歳の立派な大人でも恋愛ってなると意味わかんないことで嫉妬したりむかついたりするものなの。だから気にすんな」
「うん…っ」
「あと…いつでも戻ってきていいから。ほんと1日とかで帰ってきてもいいから」
「1日って…ふふ、それ意味ないよ…」
少し寂しいけどこのまま一緒にいすぎて険悪になっちゃうほうが嫌だし。
自分の気持ちに整理がついたら帰ればいい。
たくさん自分に言い聞かせて私は涙を拭いた。