無口な担当医は、彼女だけを離さない。


知らなかった。まさかあの日私の知らないところで優愛さんにそんなこと言ってくれていたなんて。


あー…だめだ。最近本当に涙もろい。また泣きそう。



「そんなこと言われたら何の気持ちもなくなったし!だから自信持ってよ。栞麗ちゃんはめちゃくちゃ愛されてるよ?」



優愛さんの言葉で世那くんと出会ってからの思い出が全て思い出された。


思い出したら最初から世那くんは私のことを見てくれて目を離した瞬間なんかなかったかもしれない。


ただの患者の時からこんなに大事にしてくれていたのになんで離れてから気づくんだろう。



「え、ちょっ、栞麗ちゃんどうした?わ、泣かないで~!」



気が付いたら涙が溢れていて、手遅れだった。


慌てる優愛さんのためにも早く止めないと、分かっているのにどうしても止められない。


感情は、やっぱり無視できないみたい。

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