無口な担当医は、彼女だけを離さない。
優愛さんは私の手を引いて走りだした。
み、見た目からは想像できないくらい力が強い…。
無事優愛さんと一緒に呼吸器内科の外来に着いた時にはもう既に17時30分を回っていた。
「ごめん世那!栞麗ちゃん引き留めちゃってた!」
「は?なんで葉月と栞麗が…」
勢いよく優愛さんが診察室のドアを開ける。
ずかずかと入っていく優愛さんを見て大丈夫なのかなぁと思っていたがもう外来は終わっており人は誰もいなかった。
「ごほっ…は、ごほっ」
「…お前まさか走らせた?」
「えっ…」
「馬鹿かこいつ喘息持ってるって言っただろ。医者なのにそんなこともわかんねぇのか。…それともなんだ、嫌がらせか?」
「ご、ごめんなさい!喘息、あ、そうだ、栞麗ちゃん…」
「世那く、違う。優愛さんっ、悪くないからっ…」