無口な担当医は、彼女だけを離さない。
言葉にして伝える
病院からを出て冷たい風が2人を包む。
世那くんと会わない間に街はすっかり冬の匂いがするようになっていた。
「あーさみぃ。もう年末かー」
世那くんの家に向かってるはずなんだけどもう病院を出てから15分は経っている。
私がずっと話を切り出せずにいるからきっと遠回りしてくれているんだと思う。
「世那、くん」
15分溜めてやっとの思いで絞り出した私の声は小さくて震えていた。
歩く足を止めて私を見つめる世那くん。
「うん」
「あの、ね。えっと…」
喋ろうとしては言葉が出ずにを繰り返している私を見て世那くんはそっと手を握ってくれた。
「大丈夫だよ」私は世那くんのこの言葉に何回救われただろう。
きっとこれからも私は世那くんに助けられながら生きていくんだろうな。
でも私だけ守られるなんて嫌だ。
世那くんの傍にいたい。支えたい。必要とされたい。
誰からも必要とされず孤独だった過去にはもう戻らない。そう決めた。