無口な担当医は、彼女だけを離さない。
「世那くん、1ヶ月も待ってくれてありがとう。この1ヶ月…思ったより普通に過ごしてた。大学もちゃんと行ってたし、何ならバイトはちょっと増やしてた。世那くんに出会う前に戻った感じ。可もなく不可もなくな日常だった」
自分で距離を置きたいって言っておきながらもしかしたら少し落ち込んだりするのかなーとか思ったけどそれもあまりなくて。
寂しさが少しあったくらいで毎日の生活は変わらなかった。
「だから正直…このままでもいいのかもって思ったよ。ほら、私元々恋愛なんてしたこともなかったし人が恋愛なしでも生きていけるっていうことくらい分かってたからさ」
「…そうだな」
「でもね。温かみが足りなかった。離れてみてどれだけ世那くんの存在が大きいか気が付いたの」
世那くんと一緒に住んでいた時はふとした時に寂しさを感じることはなかった。
この期間家に1人だったわけでもないし日和の温かみがないわけじゃない。
その時初めて好きな人でしか満たせない心の隙間があることに気が付いた。
私は世那くんに出会ってその温かみを知ってしまったから心の隙間に気づくことが出来たのだと思う。