無口な担当医は、彼女だけを離さない。
「心の隙間って…恋愛じゃなくても満たせる人はいると思う。友達、家族とか。でも私は、世那くんだったの。世那くんに出会わなければこんなこと一生気が付かずに済んだのに…見つけられちゃったからさ」
「え、まさかの俺のせい?」
「そうだよ世那くんのせい!世那くんのばか!気が付いちゃったらもう私世那くんなしで生きていけないじゃんかぁ!ずるいっ…!こんな…こんなに好きになるなんて、初めてで…っ恋愛なんて絶対無理だって、思ってた、のにっ!」
「ちょ痛い…いてぇよ!」
ぽかぽかと世那くんをこぶしで叩く。こんなの逆ギレじゃんか、と思うけど止まらない。
それと同時に「うぅ…」と小さな嗚咽が洩れる。涙が頬を伝って落ちていく。
「世那くんと一緒にいるとっ…勝手にしんどくなるしっ、それなら1人でいいって思ったのにぃ~…ぅう、でも好きなんだもん離れられるわけないよ~…」
「…うん」
「世那くんにもう出会っちゃったのに、世那くんと一緒に居られない未来なんてっ…嫌なの…気づくの、遅くてごめんね…っいっぱい待たせて、困らせてっ、ごめんなさ…」