無口な担当医は、彼女だけを離さない。
「やっと泣き止んだか馬鹿」
「うう、馬鹿って言われるのも久しぶりだ…嬉しい…っ」
「は?喜んでんのかよ…」
若干引き気味の世那くんだったけど呆れたように笑ってくれた。
「世那くんっ」
「ん?」
「私を見つけてくれて、ありがとう」
「…んだよそれ」
「世那くんのおかげで、少し人もいいなって思うようになった。これから先の未来も考えるようになった。…世那くんと一緒にいる時の私は、ちょっと好きだなって思った。全部全部世那くんに出会わなければ気が付けなかったことだよ」
ほぼ泣き笑いだった。やっと言えた。ずっと言いたかった。
今の私なら言えるかもって思える時がきて、本当に良かった。
「泣くなって言ったろ…」
「笑ってるもん泣いてないっ」
「うん。好き」
「えっ」
「この1ヶ月死ぬほど会いたかったし死ぬほど寂しかった。好きって伝えられないのがこんなにしんどいとは思わなかった」
「いっぱい言って。私もいっぱい言うから」
「…お前言ったな?」
世那くんと目が合い、笑顔で頷く。
「早く帰るぞ。寒いし早く2人きりになりたい」
「今も実質2人きりだけどね…周り誰もいないし」
「へー、栞麗は外でするのがいいんだ」
世那くんの言葉の意味が分かった途端ぶわっと顔が熱を帯びた。
「せ、世那くんのばか!何言ってんの!」
「そのまんまの意味だけど?」
「っ~…!」
「あれ?顔赤くない?どうしたの」
「うるさい暑いの!」
「12月なんだけどなぁー」
世那くんの方がいつも上手で悔しいけど、きっとこれから先も私は世那くんに敵わないのだろう。
この星屑の数ほどいる人の中から私のことを見つけてくれた世那くん。
そんな素敵な人に出会えたことを私は一生誇りに思う。