無口な担当医は、彼女だけを離さない。


「だから…ごめんなさい。気持ちは本当に嬉しいけど今すぐ友達には戻れない、です」

「…分かった。ごめんね、いきなり腕引っ張って」

「ううん、私の方こそテスト勉強ほんとに助かった。ありがとう」



私はそう告げて山本くんに背を向けた。


山本くんと前のように話せなくなっちゃったのは悲しいけど…世那くんを悲しませないようにするって決めたんだ。


今すぐに友達に戻れないだけでまたいつか話せる。そう思えば全然平気だった。



「あ、やっと戻ってきたー!山本は?」

「日和、私今日帰るね。2人で打ち上げお願い、ごめんね」

「え?打ち上げしないの?」

「ほんとごめん、今日実は世那くんと出かける予定あって」

「ちょ、私聞いてないんだけど?!ねぇー!」



そう。今日実はこの後世那くんとデートなのです。


少し気持ちは複雑だけどこの予定は前から決まってたことだし、切り替えて楽しもう。


今回も日和に色々聞かれるのが恥ずかしくて事前に言えなかったのは申し訳ないけど。


でも今回は正真正銘の初デート。


もう付き合って何ヶ月?って感じだけど一緒に住んでたこともあってまともなデートをしたことがない私達。


この間私の誕生日会を開いてくれた時と同じような緊張感。そういえばあの時もデートっていう口実だったな。


そんなことを思い出しながら私は急いで荷物をまとめて大学を出た。

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