無口な担当医は、彼女だけを離さない。


世那くんと目が合い、手を差し出される。



「今日初めて目合ったな?」

「そ、そう?」

「うん。全然こっち見ないから照れてんのかと思った」

「今更照れるわけないし…早く行くよ」



私は差し出された手を乱暴に握って歩き出した。


あーもう最近ほんとだめだ。せっかくまた世那くんと一緒にいられるようになったのに変な意地を張ってしまう。


可愛げがないのは自分が1番分かってるけど…どういう反応が正解なのか分からない。


世那くんと目が合うだけでドキドキしてしまう。もうこんなことで照れる間柄じゃないのに。



「こっちがいい」

「なにこれ、恋人繋ぎ?」

「よく知ってんね。ほら、こっちの方が隙間ないでしょ」

「…うん」



一方世那くんはというとさっきから余裕そうな感じが目に見えて分かって少し悔しい。


どうあがいても私と世那くんの間には7年の差と恋愛経験の差があるわけで。


たまにそれを思い知って悔しくなる。


いつも私ばかりドキドキさせられているような感じがするから。

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