無口な担当医は、彼女だけを離さない。


「世那くんもうちょっと子供っぽい服持ってないの?」

「は?なんで」

「別に…」



あの時もう小さなことは気にしないって決めたはずなのに…またしょうもないことで悩んでる。


やっぱり未だに世那くんのスペックが高すぎて怖気づいてしまうこともあるし。特に外に出ると。


家に2人でいる時はあんまりそんなこと感じないのにな。



「今日何食べたい?」

「…お肉」

「りょーかい。うまい店行こ」

「ほんとに?」

「瞬太の知り合いが店やってんだよ。そこまじでうまい」

「えっイルミより楽しみ」

「おい」



なんだかんだ1時間くらい電車に乗り、着いたのは都内のイルミネーション。


クリスマス前だったためまだ人は少なかった。



「綺麗~…私、イルミネーション初めて見た」

「まじか、初イルミどうよ」

「ちょっと眩しい」

「えそれ言っちゃう?」



イルミネーションなんて正直なんでみんながこぞって行きたがるのか分からなかった。


キラキラしてて、眩しくて。あんなところ行ったってむなしくなるだけだって思って上京しても1回も行かなかった私。


初めて見るイルミネーションは思っていた通り眩しくて少し眉をひそめてしまうほど。


けど、初めて好きになった人と手を繋いで歩く街はもっと眩しく見えた。

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