無口な担当医は、彼女だけを離さない。
「え、いつから…」
「栞麗に近づいたら酔いより普段の俺が勝ったわ」
「なにそれっ…ん」
ぐいっと引き寄せられいつの間にか唇が塞がれていた。
自分がいる場所が外だとも忘れたのか世那くんはキスを辞めない。
流石に人目が気になったので私が世那くんの服を掴むとやっと離してくれた。
「何」
「何じゃなくてここ外!1回ならまだしも世那くん長いんだもん…」
「いいじゃん誰もいないし」
「さっきいた!もう帰るよ、明日もお互い休みじゃないんだから」
世那くんは不満げな顔で私の頭から手を放す。
いつもこの手で押さえられて全く放してくれない。1回1回のキスも長くて息持たないのに…。
それに比べて世那くんはキスで呼吸が乱れているところなんか見たことない。
世那くんの肺活量がすごいのか私が弱すぎるのかどっちなのかは分からないけど。
「栞麗は未だにキスの時息止めるから苦しくなるんでしょ」
「へっ?」
「まぁそれもかわいいけどさ」
「待って普通止めるものじゃないの?」
「…栞麗はそのままでいればいいよ」
なぜか呆れたような目で見られ呆然とする私。
手を繋ぎ直され結局世那くんは何も教えてくれなかった。