無口な担当医は、彼女だけを離さない。
最初は過保護すぎて引いてたけど、今はむしろ嬉しい。
本人には言えないけど、私だって世那くんのことになったらきっと過保護になっちゃうし。
だって自分を大切に思ってくれる人のことなんか1番大切にしたいじゃんね。
「あ、そういえば明けましておめでとうだね」
「もう12日ですけどね」
「私ももう今年卒業だよ~、怖すぎる」
「…そうだな」
年を越したことを実感すると同時に自分がもう4年生になることに気が付き怖くなる。
高校3年間よりも大学4年間の方が断然短い感じがするのはなんでだろう。
「私のわがままになっちゃうけど…お父さんに卒業式来てほしかったな」
「そうだな。俺じゃそこの枠は埋められないし」
「え、世那くん来てくれるの?」
「…行かなくてもいいんだよ?」
「嘘嘘来てくださいお願い」
嬉しい。高校の卒業式、お母さんもお父さんもいなかったから式が終わったらすぐに帰ってたな。
周りはみんな友達とか親とかと一緒にいて写真なんか撮ったり。
その眩しいところにあの時の私の手は絶対に届くことがなくて。
世界で自分だけが1人なんじゃないかって本気で思っていた時期もあった。
でも今は胸を張って違うと言える。
孤独を感じる時があっても、それはきっと本当に自分を大切にしてくれる人に出会えていないだけ。
その人に会うタイミングは人それぞれで、早い人もいれば遅い人もいる。
私は去年、そんな人に家族以外で初めて会った。
不愛想で口も悪くて誰かを大切にする、なんて言葉から最も離れていそうな人。
今思い返せばそんな第一印象、面白すぎるね。
「何1人で笑ってんの。…怖」
「口はやっぱり悪いんだ…」
「え、ほんとに何?」
隣で困ったように笑う世那くん。私が初めて隣にいたいと思えた人。
『お父さん、私…多分今1番幸せだよ。だからもう心配しなくて大丈夫。これからはお母さんの分も、お父さんの分も頑張って私が生きるから』
お父さんが亡くなる直前に伝えたこの言葉。
昔の私がこの言葉を聞いたら綺麗ごとだな、と思っただろう。
でも私だけの力でここまで思えるようになったわけではもちろんない。
誰にも気づかれなかった小さな星をここまで輝かせてくれたのは間違いなく世那くんだった。