無口な担当医は、彼女だけを離さない。
意外だと思った。
柊さんはてっきり人の死になんか興味ないものだと思っていた。
でも柊さんは医者だし多少は人を死なせたくないって思いはあるんだろうな。
「私は…死ねないです。死にたくても自分の手で自分のことは殺せないんです。お母さんに顔向けできなくなるから」
「…うん」
「私が自殺してお母さんと会えたとしてもきっとすごく悲しませるって分かってるから。だからどうしても…できないんです」
「まぁでも…生きる理由ってそんなもんでいいんじゃないの」
「え?」
「そんな大きな目標なんかなくても家族を悲しませたくないとかで十分だろ」
その言葉で私ははっとした。
初めて誰かに自分の生き方を肯定された、そんな感じ。
ずっと生きていることに罪悪感を感じていた私にとって、柊さんのその言葉はとても響くものがあった。