無口な担当医は、彼女だけを離さない。
「ありがとう、ございます…」
「別に俺はなんも。…じゃ、ささっと聴診だけするね」
その後の聴診もそこまで抵抗はなかった。
なんの根拠もないけど、柊さんなら大丈夫かもと思えた。
「薬は昨日渡した分飲んでもらって。思ったより回復してるから明日は来なくていいよ」
「…はい」
「はい終わり。お疲れ様」
診察が終わり、私は柊さんにぺこっと頭を下げて部屋を出た。
あ、そういえば明日は来なくていいって言ってくれたような。それは嬉しい。
薬飲めばそんなに体調も悪くはならないだろうし、バイト行こうかな。
そんなことを考えながら歩いた夜だった。