無口な担当医は、彼女だけを離さない。
齋藤栞麗は一見しっかりしてそうだけど中身は思ったよりも弱い。
よく泣くし、常に何かを抱え込んでいる。
この間海斗と俺と彼女で飲みに行って泥酔した時も、泣いていた。
「おいまじで置いてくぞ、まじだからな」
「や…だぁ…」
「だからじゃあ立てよ」
「みんな…私を置いて、どっかに、いっちゃう…」
「…は?」
「柊さん、も…私のこと、捨てちゃう?」
「ちょ、何言ってんだよ」
「みんなっ…、わたし、のこと置いてくから。嫌な言葉だけ残して、…いなくな…っ」
こんな酔ってる時の言葉を信じるやつの方が馬鹿かもしれない。
でも家に着いてからもその言葉は頭から離れなかった。
彼女の、誰にも言えなかった本音を聞いてしまった気がして。