無口な担当医は、彼女だけを離さない。
彼女は15で1人親の母親を亡くし、高校3年間は施設で過ごしたと聞いた。
最近彼女に出会った俺ですら母親の死だけでも辛いんだからクソみたいな医者には出会わないでほしかったと思う。
医者を怖がる姿はかなり痛々しい。
もちろんこちらとしてもそんな姿は見たくもないし発作も起こしてほしくないので細心の注意を払った。
すると彼女との同居生活初日。予想もしてなかった言葉が聞けた。
「私…柊さんならもう怖くない、です。聴診も、検査とかも。だから安心?してください」
久しぶりに心から嬉しいと思った瞬間だったと思う。
でもその感情をどう表現したらいいのか分からず、結局反応の悪い返事をしてしまった。