僕をスターにしてくれた君へ
彼女の1番の愛を死守するために
「今度の出演ドラマは、〈ずっと側にいるのに伝えられない想い〉っていう作品にしたからね。」
「こないだ言っていた片想いの作品ですよね?」
「そうよ。2番手役もうちの事務所から出演させることにしたの。」
「そうなんですね。ゆりさんが担当している俳優ですか?」
「そうよ。こないだスカウトした期待の新人よ。」
彼女は、誇らしげな顔をしていた。
「ゆりさんが直接スカウトしたんですか?」
「そうよ。スカウトをしたのは、夢人以来8年ぶりかな?」
ゆりさんの主な仕事は、マネージャー。
スカウトをするのは、珍しい。
ゆりさんが直接スカウトする程の逸材だったということだ。
ゆりさんは、8年前僕をスカウトし、僕を所属タレントとして育成し、売り出した。
そして見事僕は、スターになった。
そのことで彼女は、会社内でも地位を上げた。
僕と初めて会った時は、担当していたタレントは、僕だけだったが、現在は、多くのタレントを担当する敏腕マネージャーとなった。
そんな彼女が直接スカウトするような逸材が現れたことに内心焦っていた。
僕は、彼女に愛してもらわなくてもいい。
ただ彼女が担当するタレントの中で1番に愛してもらえればいい。
でもそれさえも誰かに奪われそうな気がした。