ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
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結婚式が終わると、かねてより進められていた土地の売買契約が締結された。
銀行の担当者、弁護士、槙島の重役などの面々が見守る中、大叔母がテーブルに置かれた書類に署名、捺印を行っていく。最後の書類に捺印が押されると自然と拍手が巻き起こった。
「大叔母さん、お疲れ様!!」
「ん」
契約には灯至と粧子も立ち会った。
高齢の大叔母の代わりに役所に行ったり、契約書の条文におかしなところがないか事前に確認したりと粧子にとっても契約は大仕事となった。数ヶ月にも及ぶ懸念事項が何事もなく終わり、ようやく肩の荷が降りたような気持ちだ。
しかし、これですべてが終わったわけではない。
立ち退き期限は三ヶ月。
その間に大叔母の引っ越しの準備を進めなければならない。大叔母は既に灯至に勧められた老人ホームに入所を決めている。
「モト子さん、押しますね」
灯至は座面にのる大叔母にひと声かけてから車椅子を押した。
これから、入所に先立ち老人ホームで一泊のお泊まり体験をしに行くのだ。
灯至は吾郎の振りを根気よく続けてくれた。
迎えの車に乗り込むと、大叔母は灯至に向かって手を振った。
「行ってきます、吾郎さん」
「ああ、楽しんでおいで」
灯至に微笑む大叔母の嬉しそうな顔といったらなかった。この光景を見られただけで結婚して良かったと思えた。