ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
6
例年よりも短い梅雨が明けると、太陽の光が燦々と降り注ぐ眩しい夏がやってきた。
粧子はレンタルスーツケースを借り、いそいそと旅支度をしていた。明日から三泊四日の新婚旅行に出掛ける予定なのだ。
行き先は沖縄になった。海外も候補には上がったものの、灯至の仕事の都合がつかなかったので結局国内となった。旅行らしい旅行は高校の修学旅行以来で、粧子は密かに楽しみにしていた。
「荷造りは終わったか?」
「はい」
「多いな」
「これでも減らしたんです……」
久しぶりの旅行だからと浮かれて詰め込みすぎたかもしれない。灯至の荷物はボストンバッグがひとつきりなのに対し、粧子はスーツケースに加えてサブバッグまで……。
それでも灯至は仔細は聞かずに、車のトランクルームにスーツケースを積み込んでくれた。
翌朝、灯至の運転する車で空港まで行き、飛行機に乗り換える。
初めて乗る飛行機とあって離陸と着陸の瞬間は墜落したらどうしようと心臓がドキドキした。しかし、心配は杞憂に終わり無事三時間のフライトを終える。
沖縄に到着すると、空港でレンタカーを借りた。槙島家が所有するリゾートホテルは空港から二時間ほど車を走らせた沖縄本島中央部の沿岸にある。
「うわあ……」
ホテルが見えてくると粧子は感嘆のため息をついた。白亜の宮殿のような美しい外観と南国風のヤシの木。眼前には透き通るようなウォーターブルーの海が広がり潮風が心地良い。