ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
「槙島様、お待ちしておりました」
ロビーに降り立つとホテルの支配人と思しき人物が真っ先に灯至の元へとやってきて深々と頭を下げた。はるばる槙島本家のお坊ちゃまがお越しになるとあって、どことなく緊張しているようだ。
「妻の粧子ともども世話になる」
灯至はというと特に気負うことなく慣れた様子で挨拶を返した。道行く先でVIP待遇を受けることは灯至にとっては当たり前のことだった。
二人が泊まる部屋までは支配人自ら案内してくれた。
灯至が予約してくれたのはホテル内に一室しかない最高級のスイートルーム。
主寝室の他にゲストルームや、遊戯室、シアタールームに簡易キッチンまである。バルコニーには海が見える方向にリクライニングチェアが設置されていた。リゾートホテルの最上階は見晴らしが良く、ここで朝日を浴びたら気持ちよさそうだ。
荷物を運んでもらい、支配人が部屋から立ち去ると灯至は早速ソファに足を投げ出し寛ぎモードに入った。
テーブルにはウェルカムドリンクとしてトロピカルジュースも用意されていた。
移動で疲れていた粧子だったが、南国の味のご相伴に預かると少しだけ元気が出てきた。