ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
翌日は綺麗な砂浜が有名な景勝地に出掛けた。帰りには名物だというマンゴーのジェラート食べた。
三日目はホテルでのんびりした。朝はヨガのレッスンを受け、昼はホテルのプールで遊んだ。夜は部屋にある遊戯室で灯至にビリヤードを教わった。
筋が良いと誉められたが、結局ナインボールでは一度も灯至に勝てなかった。仕事も遊びも器用にこなす人だと、粧子は思った。
三泊四日はあっという間に過ぎ、最終日にはすっかり沖縄が名残惜しくなった。
「本当に楽しかったわ……」
「そうだな」
飛行機のチェックインの時間は十四時だ。
朝食も食べ終わったところで、そろそろ帰り支度を始めなければならない。荷造りは混迷を極めた。
行きはスーツケースの中に余裕があったが、帰りはお土産でパンパンになった。
今朝使ってしまい忘れたポーチをスーツケースに詰め直していると、灯至に背後から抱きよせられる。
「灯至さん?」
どうしたのかと尋ねる前にワンピースのファスナーが下ろされ背中が露わにされた。大きな手が縦横無尽に這い回り、敏感な首筋に舌が這わせられる。
「折角の新婚旅行だ。最後まで楽しめよ」
「で、でも!!飛行機の時間が……」
「いいから」
振り向き様を狙い粧子の口を塞いだ冬至は、裾を捲り太腿に指を滑らせた。傷跡が残る身体でも厭わず求められて嬉しくないはずがない。
粧子は向きを変え灯至の膝の上に跨った。
「少しだけですからね……?」
本来なら夫を諌めるところだか、今回ばかりは灯至のおねだりを受け入れる。新婚旅行から戻れば、灯至はまた激務に身を投じなければならない。二人で過ごす時間は自ずと減る。粧子も灯至と離れ難いと感じていた。
二人は帰りの飛行機をひと便遅らせ、ひとときの甘い蜜月を楽しんだ。