ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
ああ、もう……!!
失態を演じた恥ずかしさと急速に膨らんでいく恋心の狭間でやるせない気持ちなる。もはや他のことで気を紛らわせてないと耐えられそうにない。
絆創膏を貼ってもらっている間、つけっぱなしになっていたテレビに目をやる。夜のニュースの時間帯ではあるが、特別センセーショナルなニュースは報道されていない。
しかし、粧子の目はニュース画面に釘付けになった。
「あ、この遊園地……」
粧子が目を奪われたのは、とある遊園地の閉園を知らせるニュースだった。来園者の減少、人件費と燃料費の高騰による不採算による経営難。それだけならよくある話だったが……。
「そう……閉園してしまうなんて残念だわ……。三人で出掛けたことがあったっけ……」
この遊園地は両親と過ごした数少ない思い出の地だった。閉園のニュースを聞いた途端、物悲しい気持ちになる。なんとはなしに呟いた独り言を灯至は聞き逃さなかった。
「行きたいか?」
手当が終わり救急箱をしまう灯至に尋ねられ、粧子は一転してぱあっと表情を輝かせた。
「行きたい……です」
「土曜は予定を空けとけ」
こうして二人は遊園地へと出掛けることになった。