ひねくれ御曹司は気高き蝶を慈しみたい
約束の土曜日。この日、二人は都内にある『ドリームヤングランド』という昔ながらのこじんまりとした遊園地にやって来ていた。
「一番有名な観覧車に乗るには整理券が必要みたいだな。先にもらっておくか」
「はい」
園の中央にある観覧車はドリームヤングランドのシンボルとも呼べる存在だった。
閉園のニュースを聞きつけたのか、整理券の配布を待つ列には既に長蛇の列ができていた。
開園して直ぐに整理券をもらいに行ったというのに、実際に乗れるのは十四時過ぎ。三時間以上待つ必要があった。
規模の小さい遊園地なので、アトラクションも素朴なものばかりだ。子供は楽しめても、中高生や大人には物足りない。粧子達はアトラクションには乗らず、園内を見物して回ることにした。
「カフェオレでよかったか?」
「ありがとうございます」
園内をグルリと一周したところで、休憩がてらベンチに座る。灯至が自販機で買ってくれたカフェオレを飲みながら足を休める。
「子供が多いな」
「そうですね」
あちらこちらから聞こえてくる悲鳴や歓声は子供のものばかり。かつては粧子もその一員だった。子供の声が賑やかな一方で、灯至はいつにもまして静かだった。