(仮)愛する者
「・・・ありがとうございます。えっと、下ろしていただけないでしょうか?」
初めて聞くその声は、歌声と同じく、とても綺麗で、でも可愛かった。
(って、そうじゃなくて!)
「ごめん!」
急いで、でも、そっと下ろした。
「あの、君の名前聞いてもいいかな?」
「はい。私は歌・・・あ、いえっ、愛姫です!」
途中何か言いかけて、はっとした顔をして、言い直した。
(聞いたらいけないのかな?)
すごく慌てている。
「あ、あのっ!お兄さんのお名前は?」
「あ、ごめんね。僕こそまだ名前いってなかったね。」
一度深呼吸をして、少女の目を見て名を告げる。
「僕は、月野原(つきのはら)タクトだよ。」
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