あの花が咲く頃、君に会いにいく。
扉に警戒していたから後ろの窓ガラスが割れるなんて思ってもいなくて、思わず悲鳴を上げる。



「い…ったあ!?」


「早乙女!?」



腕を刺すような痛みがして確認してみると、割れたガラスの欠片が右腕に深く刺さり血が垂れていた。


また体が生きていた頃に戻っていたのだ。



「早乙女、大丈夫か…」


「楓、後ろ!」



私の心配をしてくれた楓の後ろから、触手のような黒髪が伸びてきて楓の首に巻きついた。



「ぐ…っ!」


「楓!」



痛む右腕も使って無我夢中で髪の毛を解こうとするが、なぜかぴくりともしない。


力を込めた爪が剥がれかけて血が出てきているけど、そんなの気にしている場合じゃなかった。



–––「カラダ…チョウダイ…」



またあの不快な声が頭にキーンと流れてきて、思わず頭を押さえてうずくまる。



「やめ…てっ。楓を離して!今日はあなたと…天内優香さんと、話に来たの!」
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