あの花が咲く頃、君に会いにいく。
その中に私の居場所なんてどこにもない。教室の隅っこでただじっと息をしているだけ。



「あの、天内さん…。これ、担任の先生がノートのコピー渡せって…」



学級委員の眼鏡をかけた女子生徒が恐る恐るといった様子で、まとめられたA4の紙の束を差し出してきた。



「…ああ、ありがとう」



お礼を言って受け取ると女子生徒はほっとしたように小さく笑い、自分の友達の元へそそくさと帰って行った。



昔から体が弱く、小学校を卒業する頃に告げられた病名は未だに覚えていないほど長い名前のものだった。


薬を変えたり手術を何度も行っているのに一向に良くならないこの病気のせいで、学校にまともに行けたことなんてなかった。


やっと学校に来れた今日だって、話しかけてくれる友達もいなくて、なんのためにここにいるのかわからない。



中学の時には友達がほしくて学校に行ける日にはグループができていようが必死に話しかけたりしていた。


だけどすぐにまた入院生活に戻ってしまう私に、ずっとそばにいてくれるような友達なんて一人もできることはなかった。


私はもう友達を作ることなんてとっくに諦めたんだ。



「初めまして、僕は迷える霊を導く天使様。君は病気で亡くなったんだ。覚えてるかな?」



なんのために生きているのかわからなかった人生が突然終わってしまった時も、私は大して何も思うことはなかった。



「…そう。やっと私、死ねたんだ」


「死んだ人間は一度現世に戻って49日間の間で未練を解消しなければならない。未練は最低一つ最大三つだよ。君の未練はなに?」
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