あの花が咲く頃、君に会いにいく。




「…っ、ゆう…か…さん…っ」



名前を呼ばれた優香さんの髪の毛がぴくりと反応をして力が緩まった。



「本当は…こんなことがしたいわけじゃ…ないんでしょ…?」



咳き込みながら、さっきまでびくりともしなかったのに簡単に離すことができた髪の毛を辿って、優香さんの目の前まで行く。



「本当にしたかったことは、もっと別のことなんでしょ…?ずっと健康な体がほしかったんだよね。優香さんが本当にしたかったこと、私たちとしようよ。今からでも、遅くないんじゃないかな…?」



さっきまでのおびただしい雰囲気が嘘のように大人しくなった優香さんの髪の毛がスルスルと元の長さに戻っていき、やっと顔が見えた。


現れたのは、戸惑いながらも私を見上げる普通の高校生の女の子だった。



「…本当に?」



鈴の音を転がしたような可愛らしい声に、うんと微笑みかける。



「夜の学校って、ワクワクすると思わない?」


「…うん。一度は忍び込んでみたいと思っていたの」


「だよね、わかる。あ、そうだ。一緒に探検しない?きっとすごく楽しいよ」



優香さんに手を差し出すと、迷いながらもこくんと頷き手を重ねてくれた。
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