あの花が咲く頃、君に会いにいく。
楓は眩しいものを見たかのように目を細め顔を逸らすと、「でも」と続けた。



「でも、悪霊を祓うのは簡単ではない。悪霊が消える方法は二つだけだ。霊媒師とか専門の人が強力な力を使って無理矢理祓う。ただしこれをされた悪霊はいわゆる天国という場所には逝けない。つまり生まれ変わることができない。もう一つは、悪霊自身がこの世界から消えること。だけど悪霊になるくらいこの世に強い思いを残しているということだから、そんな簡単にいくわけがない。…早乙女があいつを救うことは、できないかもしれないんだ」


「…それでも、私は優香さんを助けてあげたい。同じ霊同士なんだから。…ダメかな?」



楓ははあと大きくため息をつくと、私の腕を引いて立ち上がった。



「それでおまえは…天内は、何がしたいんだ?」


「…あなたも協力、してくれるの?さっきあんなにひどいことをしてしまったのに…」


「このお人好しがおまえを助けたいって言ったんだ。俺はこいつにとことん付き合うと言ってしまったから、こいつがやると決めたことは俺も責任を持って最後まで付き合う。それに傷は治してくれたから、それでチャラだ」



優香さんが初めて笑顔を見せた。


少し幼くてでも儚くて、とても綺麗な笑顔だった。





「まずは図書室。生きている時はずっとベッドの上にいたから、やることが本を読むくらいしかなかったのよね」



優香さんが夜の学校を我が家のように迷いなく進んでいき、図書室の鍵を開けて入って行った。



「本とか漫画くらいしか読んだことないな…。なんかオススメはあるの?」


「オススメ…。そうね、恋愛ものは好きよ。恋なんてできる環境じゃなかったから、ストーリーの中に自分が入った気分でいつも読むようにしていたの」
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