あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「へぇ、じゃあ私たち三人、初恋がまだだよトリオじゃん!」


「なんだその変なネーミングセンスは。不快だ、謝れ」


「本当のことなのに!」



いつも通り楓と言い合っている様子を優香さんが微笑ましそうに眺め、クスクスと笑っていた。



「二人は生前恋人同士なのかと思っていたわ」


「「誰がこんなやつ!」」



思わずハモる私と楓に、優香さんがもっと笑った。



優香さんの力のおかげか、この学校の中にいる間は生身の体に戻ることができて本を触れた。


だからしばらく三人で本を読みながら感想を言い合ったりして、次は科学室に行く。



「人体模型ってどうしてこんなに不気味なんだろ…。これって夜中に動いたりしないの?」


「うーん、二十年間この学校にいるけど、今のところ動いてるところを見たことなんてないわ。あ、でもたまに科学室から笑い声が聞こえてくることがあって…」


「きゃあああ!何それこわ!」


「嘘よ」



ふっと楓が馬鹿にしたように笑ってきて、その横腹に肘を突きつける。



次に音楽室に行き、食堂や体育館、中庭や教室など一通りの場所に行き、最後は屋上に行きたいと優香さんが提案をしてきた。


鍵のかかっている屋上も難なく優香さんが開けてしまい、その後ろを楓と一緒についていく。



「病気で入院ばっかりしているうちに、どうして私なんだろっていつも思うようになったの。何も悪いことしていないのに、神様はどうして私を選んだんだろって」
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