あの花が咲く頃、君に会いにいく。
女の人がゆっくりと、一歩一歩こちらに近づいてくる。


嫌だ。来ないで。怖い怖い怖い。



願いも虚しく、目の前まで来た女の人が、ゆっくりと顔を上げた。


長い前髪から覗く血走った真っ赤な瞳に、ぞくりとする。



女の人はにやりと口角を上げると、私の首を両手で締めてきた。



「ぐっ…あ…っ」



手を払いのけようとするが、女の人の腕をすり抜けるだけで触れない。


どうして。なんで触れないの!?



女の人の手の力が強くなってきて、体を持ち上げられる。



「く…る…っしぃ…」


「…カラダ、ワタシニチョウダイ」



耳をつんざくような気持ちの悪い声が頭に響く。



からだちょうだい?


私、ここで体を取られるの?



記憶も未練も思い出せてなくて、まだ何もできていないのに、ここで終わってしまうの?



「そん…な…っの!い…や…っ!」
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