あの花が咲く頃、君に会いにいく。
天使様が私に向かって手を伸ばし、優しく頭を撫でてくれた。



「だから、そんな悲しいことは言わないで。今日だけは正直に自分の気持ちを伝えるんだ。笑っても泣いてもこれが君にとって最後の日になるんだから」


「最後の、日…」



天使様はにこっと優しく微笑むと、静かに消えた。


＊


学校に行く前に、ふと思い立って家に寄る。


リビングをすり抜けていくと、そこには机に何かの本を広げてお母さんとお父さんが向かい合って座っていた。



「ここなんかどうだ？小枝は接客なんかは向いていないから、デスクワークの方がいいと思うぞ」


「そうね…。明日にでも面接に行ってこようかしら」



二人が見ていたのは求人雑誌だった。


お母さんは新しく仕事を探しているんだ…。



「ていうか、あなた早く会社に戻らなくていいの？お昼休憩使ってまで来てくれなくていいのに」


「いいんだよ。小枝が心配だし、ここに来れば小枝の手料理食べられるしな」


「ご飯を食べに来たいだけね…。お金取るわよ」


「嘘嘘！いや、嘘じゃないけど、やっぱり小枝の手料理が俺の中で一番なんだよ。っていうのもあるし、どんな口実を使ってでも少しでも長く小枝と一緒にいたいんだ。離れてた時間を埋めるようにね」



お母さんは「そう」とぶっきらぼうに、だけど嬉しそうにそう呟いた。
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